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本公演の魅力を語る‼「フィルハーモニー・オーボエ・カルテットwith 佐渡裕(ナレーター)」 佐渡裕インタビュー記事

🄫Peter Rigaud c o Shotview Artists

ハルトマン本人から、モーツァルトの『魔笛』をカルテットで演奏する企画があるから、ユタカ、ナレーターとして参加してくれないかと頼まれました。 ハルトマンは、オーボエ奏者としては長年知っていて尊敬していますし、僕が芸術監督を務めている兵庫芸術文化センター管弦楽団(以下、PAC) にたびたびトレーナーとして参加してくれています。オーボエや木管楽器を中心に指導や、一緒に演奏もしてくれていて 、PACの成長には欠かせない存在です。そんな彼からの頼みですし、なにより「魔笛」をカルテットで演奏するということにとても魅力を感じたので、二つ返事で引き受けました。

オーケストラ全体のリーダーはヴァイオリンのコンサートマスターですが、ある意味オーボエもオケのリーダーと言えます。演奏する上で、弦・木管・金管・打楽器の支柱はオーボエで、全ての楽器を音楽的に繋いでいる存在と言えるでしょう。 オーボエが必ず最初にチューニングで基準音となるAの音 を出すのは、オーボエが音程を調整しにくいのと、音が安定していて、はっきりと響きやすいからという二つの理由からです。オーケストラはオーボエに合わせてチューニングをします。 コールアングレは、イングリッシュホルンと言った方が日本の特に吹奏楽経験者には分かりやすいかもしれませんね。オーボエよりも大きく長い楽器なので、低く味わい深い音がします。すごく特徴的なので、曲の中で大事なソロを任されたりもします。

「魔笛」は初演当時から すごくヒットした作品で、10年に渡り ロングラン上演された そうです。ストーリーは、よく秘密結社フリーメイソン の事を絡めて語られることが多いですが、こんなに長く愛される理由は、やはりモーツァルトの素晴らしい音楽があってのことだと思います。今回のオーボエ四重奏版はモーツァルトと同時代のオーボエ奏者ロシナックが編曲しました。つまりモーツァルトの時代から、オペラをもっと身近に気軽に楽しみたいという風潮があったという事なのだと 思います。現代の人たちにも同じことが言えると思っていて、もちろん劇場で、豪華なセットに美しい衣裳で歌うオペラも楽しんでもらいたいですが、この“小さなオーケストラ”といってもよいオーボエ四重奏で、まずは気軽にオペラの世界に飛び込んでいただけたら嬉しいです。

今回のカルテットはベルリン・フィルを中心に活躍しているメンバーたちなので、上手いのは当然ですが、今回の企画に関していえば、まるでオペラの歌声 が聴こえるような演奏をしてくれます。まさに名人芸。 クラシックの本場で活躍しているプレーヤーは、これほどまでに 歌うような演奏をするのだと、皆さんも驚かれる のではないでしょうか。

僕はオーケストラでは何度もフェニーチェ堺の大ホールで指揮しましたが、今回は4人と僕だけですので、どういう雰囲気のコンサートになるか、僕自身想像できないのが正直なところです。ただ、たくさんのお客様の前で演奏できるのは奏者にとっては常に 嬉しい事ですので、ぜひ一人でも多くの方にご来場いただければと思います。特に今回の堺公演は「フィルハーモニー・オーボエ・カルテット」 のツアー最終日ですので、特別な演奏会になると思います。どうぞ聴き逃しなく!

子供たちはきっと、ピアノとか、学校の吹奏楽は聴いたことがあると思いますが、室内楽の演奏会に行く機会はなかなかないと思います。前半は、オーボエとコールアングレの四重奏曲をお届けします。 本場ベルリンで活躍する奏者による 本格的な室内楽とはどういうものか、じっくり味わってください 。後半はお待ちかねの「魔笛」ですが、僕がストーリーをお話ししながらカルテットが演奏しますので、退屈することなくオペラの世界に入っていけると思います。これがキッカケとなって、 本物のオペラにも足を運んでみようかなと思ってもらえると嬉しいです。

フェニーチェ堺は、僕の事務所の元社長がプロデューサーを務めていた関係で、開館当初から何度も演奏させて頂きました。昔の堺市民会館の頃から良く知っているので、この立派な劇場が建ったときは圧倒されましたが、歴史と文化が色濃いこの堺で、フェニーチェ堺が未来に向けて新たな歴史を刻んでいくのを、僕も皆様と一緒に、見守っていきたいと思います。