特集

川口成彦フォルテピアノリサイタルシリーズ 第4回レポート

いつもそこに人が居て、歌と踊り(音楽!)がある国スペイン (2021/1/22) 

川口成彦フォルテピアノリサイタルシリーズ2020も最終回になりました。

ベートーヴェンをテーマにした3つの公演を終え、最後は「18世紀と20世紀のスペイン」と題した番外編が始まります。

 

 

今回は特色のあるピアノを2台使用し、約300年離れた音の響きをお楽しみいただく企画です。第1部はピアノの原点とも言われる1726年に開発された『クリストフォリ』の復元ピアノ(第3回ゲスト山本宣夫さんのコピー製作)、第2部は未来へ向かう現代のピアノ『ファツィオリ』(フェニーチェ堺所蔵)を使用しました。

 

 

最初のピアノ曲と言われるロドリゴ・ジュスティーニの「12のソナタ集ト短調op.1-1」が始まりました。

クリストフォリは、チェンバロより音が小さい気がしますが、打弦の加減で音に強弱がついてとっても繊細な音色を表現します。

川口さんが奏でる音に耳を傾けているうちに、当時の人はこんな音と音量に耳を傾けていたんだ!と、いつの間にか時空を超えてフェニーチェ堺の小ホールが宮廷サロンに思えてきました。そうです、貴族気分です♪

 

 

今回のトークゲストには、吉田純子さん(朝日新聞編集委員)をお迎えしました。

18世紀のスペイン音楽を当時のヨーロッパの情勢から紐解いて下さいます。大航海時代を経て、まさに多様な文化(音、リズム、舞踏等も)を受け入れていたスペインを経由し、当時のドイツ、ウィーンにも新しい音楽が広がっていったそうです。ベートーヴェンもモーツァルトもfandango(ファンダンゴ)を聞いていたのでしょうか??

2部は、うってかわって20世紀後半(1981年)突如として出現した新メーカー・イタリアのファツィオリ(ピアノ)の登場です。

川口さんが弾き始めた1音目が爆音に聞こえてしまい、思わず後ろに仰け反りそうになった人はいらっしゃいませんでしたか。笑

 

 

 

D.スカルラッティの曲は1部のクリストフォリでも演奏されていましたが、2部で聴くスカルラッティは、ファツィオリの澄んだ音色やラテンの音色と共にどんどん違う色に染まっていきます。塗り絵のようです。同じ白黒の五線譜なのに不思議ですね。

F.モンポウの「歌と踊り」がはじまりました。
川口さんがトークでおしゃっていた「スペイン音楽は必ずそこに人がいて“歌と踊り”を大切にしている」という言葉が思い出されます。なんと表現すれば良いのでしょう。地面、土、床、地に足がついた、大地に自分の足で立っている・・・このような言葉が似合います。
18世紀末フランス革命によって音楽は貴族から庶民に渡り、1920世紀初めには革命やナショナリズムにも利用されてきた音楽ですが、それらを経てもなお、スペインの地には今も市井の人々の喜びや哀愁と共に歌と踊りの音楽が在る、というのがいいですね!

 

 

イタリア・スペインの曲を情熱たっぷりに演奏してくださった川口成彦さん、私たちに新しい世界を魅せくださり、ありがとうございました。

 

【アンコール曲】ララニャガ:ラ・バレンシア―ナ (もう一度、クリストフォリに戻って弾いてくださいました。感激!)

ご覧いただいた皆さま

2021年秋には「川口成彦フォルテピアノシリーズ2021」の開催を予定しています。シューベルト、ショパン、モーツァルト、そして現代音楽家の杉山洋一さん委嘱新作を!!どうぞお楽しみに。

 

 

フェニーチェ堺広報